和なクリエイター 錺屋銀樂 原田純一
一つ一つハンドメイドで作り上げられるシルバーアクセサリー「えす」。桜や竹など日本の自然のモチーフが美しいアクセサリーは、中に革を挟む「オーバーレイ」という独特の技法を用いて作られる。「えす」を制作する三浦砂織さんにその技法と作品に込められた想いを伺った。

何も無いところから作る楽しみ

粒状の銀を溶かして型に入れ固め、何度もたたいたり熱したりして地金を作っていく。その地金をさまざまな形に加工してアクセサリーを形作る。今でこそシルバー950銀板を併用しているが、三浦さんの作るアクセサリー「えす」の原点はオールハンドメイドという言葉にふさわしく何もないところから一つ一つ作り上げることから始まった。そしてそこに表現されるのは和をモチーフにした図柄だ。

「作るアクセサリーは和柄だけではないんですが、もともと和柄の洋服などは好きでした。デザインするときに雰囲気が出せるのが和柄だったんです」と言うように、「えす」の和柄デザインは曲線が多用された動きのあるものが多く、手作りならではのぬくもりが感じられる。

「えす」の大きな特徴はシルバーの板の間に蛇革や牛革などを挟むという独特のオーバーレイ技法を用いていることだ。「革が好きだったので、銀と革の質感を合わせられたらいいなと思って」始めたという。銀板のともすれば冷たくなりがちなイメージも、この革が覗くことで、独特な質感を感じさせている。

表面をざらざらした質感に加工する「メルト」と呼ばれるいぶしの技術は、細かいシルバーの削り粉を振りかけバーナーで半溶かしの状態にするのだが、その溶ける瞬間の見極めはまさに職人ワザである。そんな技法も仲間と「こんなのできるかな?」と遊びながらやっているうちに見つけたものだという。

ペンダントトップの制作過程の一部を見せていただいた。
左上から:銀100%の「ささぶき」に銅を混ぜ、溶解して型に流し入れて板を作る。これを金槌でたたいて締める。→溶かす、締めるを繰り返して密度を高めていき、地金が出来上がる。→それを用途に合わせて引き延ばし角線、丸線等の部品を作り、柄を切り抜いた銀板に接着して形作っていく。→研磨機で表面を磨いてきれいにする。
何枚も、何枚も、流れる様な花びらを重ねて、 静かに、そして堂々と咲き誇る菊の花。切り絵を思わせる模様は1mmにも満たないほどの線まで全て糸鋸一本で切り出しているというから驚きだ。切り抜かれた模様から覗く革の色や質感と、「メルト技法」を用いたシルバーの質感が、小さなペンダントトップに表情を与える。
左はペンダントトップの裏側。ここから様々な色の革を入れる。お客様の好みの革を入れることもできる。入れた革によって同じ模様でも違った表情を見せるという。
見慣れない器具や機械が所狭しと並ぶ作業台はまるで実験室のよう。炎の出るバーナーや硫酸など危険なモノを普通に扱う三浦さん。
三浦砂織
1975年生まれ。
ブライダル関係の職業に就くが、「今しかできないこと」をやってみたくて退職。たまたま面白そうだからとやってみた江戸錺職人の一日体験でもの作りの面白さを知り、銀細工師の工房で学んだ後にアクセサリーブランド「エス」を立ち上げる。

ストーリーが浮かぶ絵柄を表現

桜の枝と花が描かれたペンダントがある。花びらがが舞いつぼみが揺れている様子が表現された小さなペンダントは、そこに和の世界が凝縮されている。「葉っぱ一枚でも生きているような、動いているようなイメージで作っています。自分の中で思い描くストーリーがあって、その絵を描くように糸鋸を動かしています。」そう、この絵柄は糸鋸一本で切り出されている。その技術力の高さは相当な物だ。しかし三浦さんは「技術どうこうよりも、見ていいなと思える、味のある、雰囲気のある物を作りたい」と話す。

「私は職人じゃないです。ただアクセサリーを作っている人です。」と謙遜していた三浦さん。「思い描いたデザインを、シルバーアクセという制約のある中で考えて試作し、納得いく物を作り上げるのは大変でもありますが、心を込めて作った物を、同じようにいいと思ってくれる人が一人でも増えたら嬉しいです」と話す彼女の手から生み出されるアクセサリーの持つ、温もりの素が分かったと思った。

あなたにとっての「和」とは?
和柄の静かで落ち着く雰囲気が純粋に素敵だなぁと思う。和柄の持つ独特な美しさをシルバーアクセサリーに表現していきたい。

和柄ペンダント 霞桜

桜の春の暖かい雰囲気を心に描きながら、花びらの一つ一つを丁寧に刻み表現している。26,250円

ペンダントトップ  流蓮
リング平打 霞桜

左:柄全体に膨らみをもたせ立体感のあるデザインになっている。30,000円 右:メルト技法を使い風に舞う霞を表現したリング。24,000円

ピアス  流蓮・唐草

蓮の花と、花をイメージした唐草がそれぞれデザインされたピアス。左:SV 13,650円、右:K18 30,000円

革ブレス  菊

何枚も流れるように重なって、堂々と咲き誇る菊の花を、銀板いっぱいに表現した作品。23,100円

wanoca「和の香」
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