誰かが残さなければならないものならば、僕が残します。
―接客に関しては、お父様のようにできるまでには経験が重要なのかもしれませんね。技術的な面で言われていることはありますか?
「父に、よく物を見ろと言われますね。着物だけじゃなくてどこか美術館行くでもいいし、行って日本画など見てこいって言いますね。ですから休みの日は美術館などにも積極的に行くようにしています。父はテレビなどに着物で出ている人を見た時に、『平面だといいけど、立体になると色のバランスなどが崩れる』と、たまに言いいます。僕もテレビに出ている人の着物の柄やバランスはチェックするようにしていますね。」
―弟子入りから店頭に立ってお客様とお話するまで、着実に成長している小倉さんですが、今まで挫折しそうになったことなどありますか?
「正直何回もありましたよ、最初の一年間はつらい時もありました。サラリーマンとは180度違う生活でしたから。体調も崩してしまって、やめようかと思うこともあったんですけど、回復して三日後ぐらいには絵描いてましたからね(笑)それからすぐに実演会にも出ていました。
Yamato Styleの匠のコーナーの職人さんって、若い方は、みなさん好きでやられてる職人さんが多いじゃないですか。僕の場合は友禅の仕事も好きですが、接客も好きで続けてるところもあるんです。接客をする者の視点から見ても、父の"相手から感謝してもらえる、喜んでもらえる接客"っていうのがどれだけすごいことなのかは分かっていたので。それを成し遂げる父っていうのはすごいなと感じていました。自分もお客様に喜んでもらってなんぼだと思っていますので、まだまだ接客についても勉強することが多いですよ。」
―苦しい時期がありながらも続けていける、友禅のやりがいはどんなところにあると思いますか?
「他の会社だと、自分だけじゃ決められないこととか、人為的な面でどこかで見切りをつけたり、妥協しなくてはいけないことが多いと思うんです。この仕事は、自分がやりたいだけやれる、妥協しなくていいって所があったので、そこに尽きるんですですよね。これをやったらお客様が喜んでくれるかな、こういうの作ったらどうだろうってことに関しては好きなだけ時間が費やせる。そこがやってて一番のやりがいですね。だから続けられる。」
―今のお仕事を始めて、伝統工芸に対して気持ちの変化はありましたか?
「誰かが残していかなければいけないものだと思っていましたが、たまたま縁があってこの家に生まれて、土台があってできるわけですから、自分がやっていかなきゃなって気持ちになりましたね。つらいことも多いんですけど、誰かがやらなくちゃいけない、だったらやってみようかなって。やはり、誰もができることではないですからね。」