手描きならではのライブ感
作業台に広げられた無地の黒Tシャツ。筆に透明の液体をつけ、ススッと筆を動かす。最初は何も描かれていないように見えるが、だんだんと髑髏の絵が浮かび上がってくる―。Tシャツをキャンバスに見立てて和柄を手描きする姿はまさに「絵師」と呼ぶに相応しい。
筆に特殊な薬液を付け黒地のTシャツに描くと変色し、独特の「鉄錆色」になる。カーキや紺のTシャツだとまた違った色合いになる。絵柄は洗濯してい くと色が徐々に抜けていき、その色落ちの具合も楽しむことが出来る。流行とは無縁の絵柄を追及するのは、色落ちも含め愛着を持ってずっと着ていられるT シャツを目指しているから。
今人気があるのが「武士髑髏」の絵柄だ。アートイベントなどでは「髑髏にスケボーを持たせて欲しい」といった要望を聞き入れて目の前で描き上げることもあるという。世の中に和柄の手描きTシャツは数あれど、「武士髑髏」というのは他に無い。「他人が着ていない物を着たい」という20 代後半から30代のこだわりを持った男性の心をとらえるのだろう。
好きな絵を描いていきたい
「子供の頃から絵を描くのが好きだったって事に気づいたんです。」サラリーマンからイラストレーターに転身し、雑誌の挿絵を描いていた。挿絵の仕事には、テーマやタッチなど編集者の求める世界を自分なりに汲み取って具現化していくおもしろさがある。でも、制約なく自由に描くとしたら何を表現したいだろう…。次第にもうひとつの自己表現の場が欲しいと思うようになっていた。そんな時、アパレルショップを経営する幼なじみから手描きの和柄Tシャツが売れているという話を聞き、実物を見て「自分のほうが上手く描けると思った。 やってみたらおもしろかった。それでこれはいけるなと」。デザインフェスタなどのイベントに出展し、そこで知り合いになったショップに取扱ってもらっ たりしてつながりが広がっていった。自分が描いた物をエンドユーザーがいいと言ってくれてお金を払ってくれる―。挿絵の仕事とはまた違う充実感だった。
描く和柄にはこだわりがある。和柄の伝統を受け継ぎつつ、ストーリー性を持たせたりトライバル柄と組み合わせたり、「今自分にしか描けない」現代的 な要素を取り入れている。「絵が好きだから、自分が格好いいと思う絵が描きたい。楽しんでやってます。」と言う村松さん。Tシャツをその場で描いて売るこ とが出来るお店を作ったり、海外進出やTシャツ以外にの物にも絵を描きたい。まだまだやりたいことはたくさんある。