トップ  >  匠を訪ねる 甲冑師 加藤鞆美:和のライフスタイル提案マガジン和型-yamato style-

  匠を訪ねる第8回は日本伝統工芸甲冑師の加藤鞆美氏。男性であれば一度は憧れたであろう侍の鎧姿。見るにも美しい甲冑は芸術品といっても過言ではない。一つ一つミリ単位の手仕事で仕上げる加藤氏の作品の数々。その制作過程や甲冑を通しての生き様に迫ってみよう。

昔のままのやり方だけで満足しない。

―お父様に弟子入りしていた時とは反対に、今は、師匠という存在ですよね。加藤さんの後を継がれる方はいらっしゃるんですか?
「息子が一緒にやってますよ。継がせたいという気持ちは、半分はありました。あとは本人が好きかどうかでしたね。」

―教えていく立場で何か感じることはありますか?
「私が教えるというより、弟子が見て覚えようとしますね、あとは聞かれたら教える。そこはそうやっちゃ駄目だよって言ったって、向こうは向こうなりのやり方があるから。新しいやり方でも綺麗に上がってたらそれはいいわけですから。逆に我々が持ち続けて来た技術よりも早くて綺麗に仕上がることもあるわけですよ。こっちが技術を教えてもらうことだってありますよ。」



―研究熱心な加藤さんですが革屋さんなどへは実際行って研究してるんですか?

「行ったり、メッキ屋さんなんてもう現場の中まで入って行きます。今は技術が進歩して昔と違った方法で作ってますから、面倒くさいものを持っていくと、これはちょっと出来ませんって言われることもある。そういう時は昔はこういう風に作ってたんだけどって言って相談しながら作ってもらってます。だから色々と首を突っ込んでますね。素材が多すぎるんですよ。甲冑自体が。鉄があって革や紐があって、それらがまとまって一つの物ができてますから、それぞれの扱い方は知ってなくちゃいけない。


―こういった知識は長年やられてこられて身についたモノだと思いますが、最初はどのように勉強したのですか?多くの職人さんは「見て覚えて来た」という方が多かったのですが・・・
「”知識”は見て覚える物じゃ無いでしょう、技術は見て覚えますけど。勉強するといっても、父親もこの仕事をしてましたし。でも聞いても、書物などに書いてあってもその通りやってみるがうまく出来ない。だからそういうのを体で覚える。見たり聞いたりした情報を自分の中で処理して、自分でやって行かないと身に付かないんですよ。」

    


「”何でだろう?”って思うことが大事ですよね、良い意味での疑問を持ち続けることですね。それからアンテナをいっぱい立てておく。昔はこの方法でやっていたけど今の技術で取り入れられるものはないかなと探してるわけですよ。取り入れられる技術があったらそれをやってみて、昔通りにできて、時間的に短く出来て綺麗な仕上がりにできたならそっちのほうが得なわけですから、それは絶えず探してます。東京都でマイスターの制度があって表彰もされるんですけど、それは伝統を守るだけじゃだめなんですよ。昔からの物にどのくらい現代のものを入れて作れるかが重要なんです。」


―まさに今加藤さんがされてることですよね?伝統を守りつつ新しい物を取り入れ、受け継いでいこうということなんでしょうね。
「伝統っていうのは、”伝”は伝えるじゃないですか。”統”は何なのか、素材にしろ技術にしろ、集めて伝えていかなくちゃいけないのが伝統なんです。ただ伝えるだけではなく統一されてないと。一つの物だけで伝えるってことはあんまりないでしょう。」


―すべてトータルで伝えていくということですね。材料それぞれの良さが合わさって、完成された美ですよね。
「(甲冑師を)やっていく中で、古い物をほどいてみて、初めて分かるんですよ。昔の人は凄いですよ。色彩感覚も素晴らしい。例えば十二単衣とか。グラデーションなんかも平安末期にはもうありましたよ。日本の感性は素晴らしい。」



常に気持ちを若く持ち、アンテナをビンビン張っている加藤氏。写真や音楽など趣味も広くお持ちなのだとか。加藤氏の作る甲冑は今もなお進化を続けているのだ。

加藤さん、ありがとうございました!

加藤鞆美
(かとうともみ)
東京都知事指定工芸士
日本伝統工芸甲冑師
日本甲冑武具研究保存会評議委員

昭和9年生まれ
昭和25年 独立