トップ  >  匠を訪ねる 甲冑師 加藤鞆美:和のライフスタイル提案マガジン和型-yamato style-

  匠を訪ねる第8回は日本伝統工芸甲冑師の加藤鞆美氏。男性であれば一度は憧れたであろう侍の鎧姿。見るにも美しい甲冑は芸術品といっても過言ではない。一つ一つミリ単位の手仕事で仕上げる加藤氏の作品の数々。その制作過程や甲冑を通しての生き様に迫ってみよう。

甲冑を見ればその時代が分かる。

―加藤さんは甲冑研究保存会に入会していらっしゃるそうですが、そこではどのようなことをなさっているんですか?
「最近はあんまり行ってないんだけど、昔は日本に残ってる甲冑がどういうつくりになってるか、実物を見て調べることをしていました。最初の総会は愛媛県であって、そこに日本最古の鎧があるんですけど。国宝重文クラスの75%が愛媛にあるんです。」

―なぜ愛媛に集まったんですか?
「そこはねー、三島水軍っていうか村上水軍の海賊の本拠地だから自然とに集まって来たんでしょうね。日本最古のものは平安中期に作られました。最初は弓矢、次に刀それから槍が出て来て、その後鉄砲が出てくる。鉄砲が出てくると鎧は首から下はだいたいぜんぶ同じような形になる。そうすると誰だか区別がつきにくいから、兜の形を変えたんです。遠くから見た時あれは誰だって分かるように。それがとても凝っていて、とんでもない格好のものもあるんですよ。つばめのシッポの形とかね。」



―時代によって形も変わるということですが、時代劇などを観ると『ちょっとこれ違うんじゃないか』なんて思うことはあるのでしょうか?

「あるある(笑)時代と鎧が合って無いなんてこともありますよ。時代によって作られる鎧は違いますからね。

―加藤さんご自身、歴史はお好きですか?
「好きですよ。テレビドラマだとか映画で時代物で、うまく馬にまたがったなぁって見てたら、逆側に降りちゃったり、そういうのが気になっちゃいます(笑)和鞍の場合は右足をかけて左足でまたがらなくちゃいけない。腰に刀があるから。西洋と日本では違うんですよ。



―甲冑の材料はどういった物なのですか?
「昔の物はほとんど革でできていて、牛の革の小札を犬や猫の革で綴じながらつなげて行く。犬、猫のような小動物は皮が薄いからそのまま使えるんですよ。」


―今は革では作らないのですか?
「革で作ったら大変ですよ。値が張っちゃって。革の代わりに紙を使います。それから靴にも使われてる「ボンテックス」っていう素材を使ってます。革のクズを粉末にして接着剤で固めたものです。昔は牛の革で作ってた部分に使っています。」


―甲冑作りは全部で何行程くらいあるのですか?
「靴屋さんでいう釘一本打ってくのが1行程だと・・・そうすると5万行程くらいあります。」


    


―作ってある物を組み立てていくイメージがあったのでが、実際は違っていて驚きました。分業というよりは1つの鎧は1人で作る感じなんですね。?
「昔の甲冑師っていうのは全部分業だったんですよ。出来上がった物をまとめて作っていくのが甲冑師だった。ところが今は、そういった、甲冑を作る上での専門の職人がいないんですよ。それに、分業するとしても全部を自分で出来ていないと指示ができない。ここをこうしてくださいって言えないじゃないですか。」





―現在は甲冑を作る上での専門的な職人さんは居ないのですか?
「職人さんは、腕はいいもの持ってると思います。でも平安時代の金物と室町時代の金物とでは、素材にも作り方にも差があって、そういうイメージを伝えるのが難しいんです。思うように上がってこないと自分で手直しします。あとは依頼する人に何べんも何べんも言って、時代のイメージに近づけていきます。納得できるくらいになるまで3ヶ月くらいかかりますけどね。」


―依頼する相手も時代に対するお勉強をしていないと分からないということですよね?
「パッと見て、ああこういう金物ねって言って自分の技だけで作っちゃうと逆に綺麗過ぎちゃって。時代の味が出ない。そういうことはいっぱいありますよ。」


―合成素材も便利でいいでしょうけど、加藤さんとしては昔の素材で作ってみたいって気持ちはありますか?
「それはありますよ!だって原点を知らないと何も言えないんだから。実際には難しいけど、やってみたいとは思います。」


―例えば、普通の、等身大サイズのものを作るとしたらどのくらいかかりますか?
「昔の物と同じように拵えてくださいって言われると3年かかります。紐から調べて発注しなくちゃいけない。メッキだって電気メッキじゃないですから。」


加藤さんにとってプラモデルはおもしろくなくて作る気にもならないのだとか。なるほど、お話を伺っていて納得ができる。細部までこだわり、計算され尽くし出来上がった甲冑たちには作り手の魂が宿っているに違いない。

次回更新をお楽しみに!

加藤鞆美
(かとうともみ)
東京都知事指定工芸士
日本伝統工芸甲冑師
日本甲冑武具研究保存会評議委員

昭和9年生まれ
昭和25年 独立